高プロラクチン血症の鍼灸治療
高プロラクチン血症とは?
高プロラクチン血症とは、本来は出産後に多く分泌されるプロラクチンというホルモンが、出産や授乳をしていないのに過剰に分泌されて、プロラクチンの数値が高くなっている状態を”高プロラクチン血症”と言います。
プロラクチン脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、乳腺を発達させたり、乳汁を産生する働きがあります。
また、卵巣機能を抑制して生理がこなくなったり、排卵が起こりにくくなり妊娠しにくくなります。
その他にも
・水分や電解質の調整
・成長および発生の制御
・内分泌および代謝の制御
・脳および行動の制御
・生殖の制御
・免疫および生体の防御
の働きがあります。
プロラクチンが高くなる原因は?
・生理的要因
プロラクチンは授乳中だけでなく、夜間、食後、排卵期周辺で高くなる傾向があります。
また、睡眠不足やストレスによっても高くなります。
プロラクチン値が高くなっているにもかかわらず、月経異常や乳汁分泌がない場合は、月経7日目以内の起床してから食事前の午前10~11時に再度検査することが勧められています。
・薬の影響によるもの
精神科や消化器系などの薬が原因となることがあります。
・抗精神病薬
・抗うつ剤
・胃腸薬
・降圧剤
・エストロゲン製剤
・甲状腺機能低下症の影響によるもの
甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、下垂体前葉がら甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の分泌が増えます。
このホルモン(TRH)にはプロラクチンの分泌を促す作用もあります。
・下垂体腺腫(プロラクチノーマ)
下垂体腺腫とは、脳の「下垂体」に発生する良性の腫瘍(プロラクチノーマ)で、この腫瘍が多くのプロラクチンを分泌するために、プロラクチン値が高くなります。
血中プロラクチン値が100ng/mlを超える場合はプロラクチノーマを疑いがあるため、専門病院での診察を受けてください。
高プロラクチン血症の症状は?
・生理周期の乱れ
プロラクチンは卵胞の成長を抑制する作用があるため過剰に分泌されると、排卵が遅れたり年に数回しか生理が起こらなかったりするなどの症状が現れます。
・無排卵月経
プロラクチンの作用で卵胞の成長が妨げらると、無排卵月経になる場合があります。
・乳汁分泌
プロラクチンが過剰になることで乳汁が産生され、妊娠・出産していなくても乳汁が分泌されることがあります。
鍼灸ではどんなことをするの?
肉体的疲労や精神的ストレスは、身体のストレス反応、ホルモン調節、免疫系の調整、生体リズムの影響などを通じてプロラクチンの分泌を促進します。
高プロラクチン血症による不妊に対する鍼灸治療は、ホルモンバランスの調整やストレス軽減を目的とした包括的なアプローチをとります。患者さん一人一人の状態に合わせた経穴の選定と、適切な刺激方法を用いることで、自然なホルモンバランスの回復を目指します。
1. 治療の基本方針
- 気血水の調整: 気血水の流れを整えることで、全身の調和を図ります。
- ストレス軽減: ストレスがプロラクチンの分泌に影響を与えるため、心身のリラクゼーションを重視します。
- 内分泌系の調整: ホルモンバランスを整えるために、内分泌系に働きかけます。
2. 主要な経穴(ツボ)の選定
以下は、不妊治療やホルモンバランス調整に一般的に使用される経穴です。
- 百会(ひゃくえ): 頭頂部にあるツボで、全身の気の流れを調整し、リラクゼーションを促進します。
- 神門(しんもん): 手首にあるツボで、ストレス軽減や心の安定に役立ちます。
- 関元(かんげん): 下腹部にあるツボで、気血の流れを促進し、生殖器の機能を高めます。
- 中極(ちゅうきょく): 下腹部にあるツボで、生殖器の健康をサポートします。
- 足三里(あしさんり): 膝の下にあるツボで、全身の気血を整える働きがあります。
- 三陰交(さんいんこう): 足首の内側にあるツボで、婦人科系のトラブルに広く使われます。
3. 具体的な治療方法
- 鍼治療: 選定した経穴に鍼を刺入し、気血の流れを整えます。鍼は深さや角度を調整し、適度な刺激を与えます。
- 灸治療: 必要に応じて、温熱効果を期待できる灸を使用し、経穴を温めることで血流を改善します。
4. 生活習慣の指導
- 食事の改善: ホルモンバランスを整えるために、バランスの取れた食事を心がけるよう指導します。
- ストレス管理: ストレスがプロラクチンの分泌に影響するため、リラクゼーション法や適度な運動を勧めます。
- 睡眠の質向上: 良質な睡眠がホルモンバランスの維持に重要であるため、睡眠環境の改善を指導します。